この病気の名前を聞いたことのある人は多いかもしれませんが 、その内容を正確に把握している人はどのぐらいいらっしゃるでしょうか?
「意志の弱い人」「ホームレス」「暴れる人」といったイメージをお持ちではないですか?確かにそういった方も中にはいますが、最近では、むしろそれらに当てはまらない人の方が多くなってきています。公務員や会社経営者、おとなしくて人のいい方などなど。
アルコール依存症の治療には、まず正しい知識を持つこと。そのためにもこのページをぜひご覧ください。
お酒を飲む人は数多く存在しますが、どういった症状が現れるとアルコール依存症といわれるのでしょうか。細かくはいくつかありますが、まずはこの2つに注目して下さい。
1.はお酒を飲むべきではない時や場所でもそれをとめるこができず一度飲み出すと適量でやめられない、あるいはお酒を飲むことによって様々な問題が生じてしまう(これを「アルコール関連問題」といいます)ことが明確なのに飲まずにはいられない。こうした状態にあることをさします。
これは身体がアルコールで酔っていることに慣れて、それが普通になっているため、お酒が切れると生じてくる症状です。1杯飲むと抑まるためこの症状を抑えるために飲むという悪循環に陥ります。
アル中(アル中とアルコール依存症は同義語と考えてさしつかえありません)の代名詞といえば、手が震えるというぐらい有名な症状ですが、これはお酒を飲んでいるときではなく、お酒が切れ掛かった状態で現れます。いつも飲んでいた人が何らかの事情で体からお酒が抜けてくると、様々な症状が生じてきます。
手指(ときに全身)の震え、発汗、不眠、イライラ感、てんかん発作のような意識消失、幻覚 (とくに幻聴)など
このような症状が現れるようになると、本人の努力や家族の協力だけで解決するのは非常に困難ですし、内科や外科の受診も問題の根本的な解決にはならず、解決を先延ばしにしてしまいます。一刻も早く専門科の相談や受診をお勧めいたします。
「朝からは飲まない」「仕事を休んだことはない」「酒を飲んでも暴れたりしない」など、自分はアルコール依存症じゃないと言い聞かせてはいませんか?先に挙げた二つの症状が出ていないから大丈夫だと胸を張っている方、本当に大丈夫でしょうか?
ここで大切な考え方はご自身がアルコール依存症かどうかということよりも、お酒によって自分の人生や生活に問題が起きていないかということです。少しでも、不安や疑問を感じたらお気軽にご相談ください。
こう言うと、「なぜ、そんなに治療や相談を勧めるのか」という声も聞こえてきそうですね。それはこの病気の末路にあります。この病気は進行性 なのです。
そしてその行く末は…
肝硬変、糖尿病、脳・心臓による突然死、転倒・転落・車による事故、凍死、自殺などなど。
この病気により引き起こされる様々な症状による死亡率が非常に高いのも特徴のひとつといえるでしょう。もし、それらを避けることができても、実際の年齢より早く老け込んで認知症のような状態になることもあります。
さて、それではアルコール依存症の治療はどういうふうに行われるのでしょうか?アルコール依存症の治療のねらいは酒へのとらわれから抜け出し、自分らしい生き方を取り戻すことです。そのためにはまず、断酒が一番の近道、そして、そのためにもっとも効果的なのがミーティングといわれる集団療法です。
参加者が出題されたテーマに沿って自らのことを話し、他者の話を聞くこと。それにより、同じ病気の他人という鏡を通して自身の病気について洞察を深め、お互いを助け合いながら断酒、回復を目指す治療方法です。
一般的な会議とはスタイルも考え方も異りますので、最初は戸惑うかもしれませんが、それになれることが治療の第一歩です。また、これらの実践として趣旨の異なる数種類のミーティングを治療プログラムとして組み込んでおります。
当院ではARP(アルコールリハビリテーションプログラム)の一部を外来の患者様にご用意しております。内容は医師による診察、アルコール依存症の患者様同士による外来ミーティング、依存症の患者様で構成されるデイケアです。